潮見駅と京葉線の歴史:もとは貨物線だった路線に、あとから駅ができるまで
東京・江東区潮見の潮見駅は1990年3月10日、京葉線の東京〜新木場間の開業と同時に生まれました。貨物線として構想された京葉線がどう旅客線になり、当初は計画になかった潮見駅がどう街を変えたのかを、公開資料でたどります。
潮見駅の開業は1990年(平成2年)3月10日。京葉線の東京〜新木場間がつながり、全線開通した日と同じです。つまり潮見駅には、京葉線とまったく同じ年齢の駅という顔があります。
そして面白いのが、この駅がもともとの計画には入っていなかったということ。京葉線そのものも、最初は旅客を運ぶための路線ではありませんでした。埋立地に人が住む街ができるまでの順番が、この路線の履歴にはそのまま残っています。
もとは「貨物線」として構想された路線
京葉線は当初、東京外環状線の一部として計画された路線でした。川崎市の塩浜操車場から東京湾沿いをたどって千葉県の木更津に至る貨物線という構想で、京葉工業地帯の物流を担うことが想定されていたとされています。いま通勤電車が走っているルートは、もともと貨物列車のために引かれた線だったわけです。
その後、計画は旅客線へと変更されていきます。公開資料で確認できる主な開業の順序は次のとおりです。
| 年月日 | 区間 |
|---|---|
| 1975年5月10日 | 蘇我〜千葉貨物ターミナル(貨物線として先行開業) |
| 1986年3月3日 | 西船橋〜千葉港(現・千葉みなと)で旅客営業開始 |
| 1988年12月1日 | 新木場〜南船橋、市川塩浜〜西船橋 |
| 1990年3月10日 | 東京〜新木場(全線開通) |
千葉側から少しずつ都心に近づいてきて、いちばん最後に東京駅までの区間がつながった。潮見が線路の上に乗ったのは、その最後の段階です。
東京駅の京葉線ホームが遠い理由
潮見に住んでいると必ず一度は思うのが、「東京駅の京葉線ホームは遠い」ということです。これには経緯があります。
京葉線の東京駅ホームは、成田新幹線の予定ルートだった鍛冶橋通りの地下に新設されたものとされています。もともと別の路線のために確保されていた空間を使っているため、在来線の他のホームとは離れた位置に、深く潜る形になりました。動く歩道の長さは、その名残です。
不便と言えば不便ですが、裏を返せば乗り換え客の流れから外れているぶん、朝でも比較的落ち着いて乗れるということでもあります。潮見駅そのものの使い勝手は潮見駅ガイドにまとめています。
潮見駅は、当初の計画には入っていなかった
潮見駅について公開資料で確認できるもうひとつの事実が、新木場〜東京間が計画された当初、この駅を建設する計画はなかったという点です。
考えてみれば自然な話でもあります。潮見が江東区に編入されて町名がついたのは1968年。それ以前は「深川8号埋立地」と呼ばれた土地で、戦後に「蟻の町」の人たちが移り住んだ場所でした(このあたりの経緯は潮見という地名の由来と「蟻の町」の歴史に書いています)。1980年代の潮見は、まだ印刷業を中心とした準工業地域の性格が強く、大勢が乗り降りする駅を前提にできる土地ではありませんでした。
駅ができたあとに、街のほうが変わっていきます。資料では、潮見駅の開業を発端として集合住宅の開発と企業オフィスの開設が急速に進んだと記されています。駅を挟んで西側は印刷業を中心とする準工業地域、東側にはホテルが並ぶという、いまの潮見の二面性もこの時期に形づくられました。
数字で見る、いまの潮見駅
- 構造:島式ホーム1面2線の高架駅
- 1日平均乗車人員:15,366人(2024年度・降車客を含まない)
- 2013年3月16日から武蔵野線直通列車が停車
15,366人という数字は、東京23区内の駅としては控えめな部類です。ただ、東京駅まで乗り換えなしで数駅という立地でこの規模というのが、潮見の静けさの正体でもあります。ホームに立って電車を待つ時間の感じは、乗車人員の数字とだいたい一致します。
なお駅のホームは、2016年10月から屋根の延伸工事が行われ、2017年6月にホーム全体が屋根で覆われたと記録されています。運河に囲まれて風の抜けるこの土地では、地味ですがありがたい改良です。
「あとからできた駅」という街の性格
潮見は、駅ができたから街になった場所です。多くの街が「人が集まったところに駅ができる」順番でできあがるのに対して、潮見は逆の順番をたどりました。運河に囲まれた島に橋が架かり、線路が通り、駅ができて、それから住宅が建った。
だから潮見には、古い商店街や門前町のような蓄積がありません。そのかわり、道はまっすぐで、建物の用途がはっきり分かれていて、街の輪郭がとても読みやすい。歩けばすぐに全体像がつかめる街です。街を囲む橋を実際に歩いた話は潮見の橋めぐりにまとめました。
35年ほど前、ここにはまだ駅がありませんでした。そう思いながら改札を出ると、見慣れた景色が少し違って見えます。
※本記事の年表・駅の諸元・乗車人員は、掲載時点で確認できた公開資料(Wikipediaの京葉線・潮見駅・潮見(江東区)の各項目)にもとづく情報です。数値や記述は資料により異なる場合があります。