運河に囲まれた街の帰宅困難対策:江東区潮見へ、橋を渡って帰るまで
東京・江東区潮見は四方を運河に囲まれた島のような町。大地震で電車が止まったとき、潮見に帰るということは橋を渡るということです。一斉帰宅の抑制と一時滞在施設、事前に決めておくことを整理しました。
平日の昼間に大きな地震が起きたとき、潮見に住んでいる人がまず考えることになるのは「どうやって帰るか」ではなく「いつ帰るか」です。結論から言うと、その場にとどまれるなら、すぐには動かない。これが東京都が呼びかけている考え方です。
そのうえで潮見という街には、もうひとつ固有の条件があります。潮見に帰るということは、橋を渡るということです。
まず「すぐには帰らない」が原則
東京都は平成24年3月に東京都帰宅困難者対策条例を制定し、平成25年4月に施行しています。柱のひとつが一斉帰宅の抑制です。
江東区の案内でも、無理な帰宅行動は多くの危険を伴う行動であると同時に、混乱の発生により行政の救命・救急活動に支障をきたすおそれがある、と説明されています。大地震のあとのおよそ72時間は救命救助が最優先になるため、勤務先などにとどまれる人はとどまる、という考え方です。
条例では事業所に対して、従業員の施設内待機と3日分の備蓄(飲料水・食料等)が努力義務として定められています。勤務先に水と食料があるかどうかを一度確認しておくと、「帰るか、とどまるか」の判断がしやすくなります。
潮見に帰るということは、橋を渡るということ
潮見は北を汐見運河、西を曙北運河、南を砂町運河、東を東雲北運河に接する、陸続きの隣町を持たない町です。潮見につながる道路橋は砂潮橋・暁橋・八枝橋・漣橋・七枝橋の5本で、詳しくは潮見の橋めぐりにまとめました。
つまり徒歩で帰るときも、最後は必ずこの5本のどれかを通ることになります。ここが平地の街と違うところで、道が混んでいるからと迂回して別ルートを選ぶ、ということがしにくい構造です。
だからこそ、平常時に歩いて渡っておく意味があります。
- 都心から歩くなら、木場・枝川を経由して東側の暁橋・八枝橋に出る形
- 東陽町・南砂方面から歩くなら、西側の砂潮橋
- 辰巳・新木場方面からなら、南側の漣橋・七枝橋
どの方角から戻ってくるかで入口が決まる、と覚えておくと迷いません。
潮見の近くにある一時滞在施設
一時滞在施設は、外出先から帰れなくなった人を一時的に受け入れる施設で、都立施設などに開設されます。江東区が公開している一覧(令和5年7月1日現在・21施設)を見ると、潮見の町内には掲載されていません。橋を渡ってすぐの範囲にあるのは次のあたりです。
| 施設 | 所在地 | 潮見からの方角 |
|---|---|---|
| 東京アクアティクスセンター | 辰巳2丁目2番1号 | 南(漣橋・七枝橋の先) |
| 計量検定所 | 新砂3丁目3番41号 | 西(砂潮橋の先) |
| 深川高等学校 | 東陽5丁目32番19号 | 西 |
| 第三商業高等学校 | 越中島3丁目3番1号 | 北西 |
区の案内では、一覧に記載のない施設を緊急的に一時滞在施設として開設する場合があるとされています。開設状況は当日の情報で確認する前提の仕組みです。
また東京都は、徒歩で帰る人のために災害時帰宅支援ステーションという枠組みを用意しています。島しょを除く全都立学校と東京武道館が位置づけられているほか、コンビニエンスストアやガソリンスタンド、飲食チェーンなどが協定を結んでおり、水道水・トイレ・テレビやラジオからの災害情報の提供を行うこととされています。歩いて帰る道すじにこうした店があるかどうかも、平常時に見ておける情報です。
東京駅から潮見は「10キロ圏」の内側
内閣府の中央防災会議では、帰宅距離が10キロメートル以内の人は帰宅可能、20キロメートル以上は帰宅困難、その間は1キロメートル延びるごとに帰宅困難となる割合が10パーセント増える、という整理がされてきました。
潮見駅から東京駅までの営業キロは5.4キロです。実際に歩けば道なりでもう少し伸びますが、この目安でいえば十分に内側に入ります。八丁堀・越中島方面も同様です。勤務先が都心なら、条件が整えば歩いて戻れる距離だと知っておくだけで、判断の落ち着きが違ってきます。
ただし歩けることと、その日に歩くべきかは別の話です。日ごろの出口の使い分けは潮見から都心への乗り換えパターンにまとめていますが、災害時はその前提が崩れます。まず情報を取り、動けるようになってから動く。順番はこれだけです。
今日のうちに決めておける3つ
- 勤務先の備蓄と待機の方針を確認する(3日分あるかどうか)
- 家族の集合場所と安否確認の手段を決めておく。災害用伝言ダイヤル171や災害用伝言板は、平常時にも体験利用ができるとされています
- 都心から潮見まで、自分が渡ることになる橋を一度歩いておく
帰宅の判断は、その日の情報だけでするものではありません。橋が5本しかない街に住んでいるという前提を、先に体で知っておくこと。家にたどり着いたあとの話は潮見の避難場所と避難所にまとめてあります。
※制度・施設の情報は東京都・江東区が公開している掲載時点の情報です。一時滞在施設の一覧は更新されることがあるため、実際の開設状況は当日の公式発表をご確認ください。